医大生 の blog

医学部のこと。読んだ本について書きます。

病院実習でわたし倫理委員会に反する言動をした友人

わたしは人より倫理アラートがしっかり備え付けられた個体らしい。
先日病院で病理解剖の切り出しという作業を見学した。病理解剖とは病院で亡くなった患者さんで死因がはっきりしないor究明したいことがある場合に行われる。切り出しとはご遺体の臓器を輪切りにして写真を撮ってデータを保存する作業だ。同時に病理標本用の切片も作られる。

許せないことがあった。3人で見学していたのだが、一人がわたしに小声というには大きい声で「なんかネギ切ってるみたいじゃない」と耳打ちしたのだ。普段なら、また別の場面なら冗談を言い合える気のおけない友人だった。

そのあともわたしがご遺体の臓器を手にとって触らせてもらっているときに「どれくらいの硬さ?牛タンと比べると?」と。

許せなかった。すべて聞こえないふりをしてすませてしまった自分が本当に許せなかった。思っていたことぜんぶ言えばよかった。

「この臓器はこの間亡くなった人のもので誰かの大切なおばあちゃんかもしれないんだよ。もし自分のおばあちゃんの解剖だったら、学生が臓器を食べ物に例えていて許せるの?そしてそれ本当に面白いと思っていってる?暇だからって真面目に仕事してる先生の横でそういうこと言うの恥ずかしくないの?」

今あの場面に戻っても言えないだろうなと思う。もしここでガチ説教かましたらうざいやつだと思われる。わたしは小学校の頃からうざがられるのが本当に怖くてこういうときに何も言えない。この場さえ流せば後は元通りになる。

ほんとは多分もし言ったらその日一日はまともに喋れなくなるだろうなと予想できていて、だからめんどくさかったのかもしれない。一日一緒にいなくちゃいけない人と気まずい空気で過ごすのが面倒だったのかもしれない。

でも振り返ってこの場所で吐き出すくらいには嫌だったし忘れられなかった。

あの日教えてくれた病理の女の先生は本当にかっこよかった。愛想はない。今まで出会ったどの人よりもなかった。でも嫌がられたくないから、微妙な空気になりたくないから、本当に思っていることを伝えないような臆病者じゃなかった。