医大生 の blog

医学部のこと。読んだ本について書きます。

【学生実習】消化器内科は臓器も疾患も幅広い

消化器内科

学生実習で消化器内科を1ヶ月見学した。

外来見学で一通り診察しろと言われ、自分なりの診察(笑)をしたところ、まったくなってないと怒られた。

オスキー(実技試験)前の腹部診察の講義に出ていないので正確な診察方法を知らなかったというのは言い訳にならない。友人と一緒に練習をして、診察しているポーズを覚えた。たとえば、打診のときは、左手の中指を右手の中指で叩くポーズをとることを覚える。音が鳴るかどうかは試験では重要じゃない。オスキーの結果を見直すと腹部診察は90点だった。試験に問題があるのでは?と一瞬思ったが私が悪いのは知っている。

学生時代に診察を体験させてもらえたのはいい経験だと父(整形外科医)に言われた。父はよく最近の医者は身体診察をしないやつが多いと怒っている。

「末期ガンでも元気です 38歳エロ漫画家、大腸ガンになる」という漫画で、お腹の不調を感じて大病院でCTを撮られたものの何も見つからずそのまま帰され、別の個人医院の触診で腫瘤が発見されたというエピソードがあった。その個人病院の院長は元大病院の外科部長らしく、ゴッドハンドじゃん!と感動したのだが、母(内科医)は触知できる腫瘤を見逃しちゃダメでしょと言っていた。そういうものなのか。

https://twitter.com/daicho_polaris/status/1286219581275557888?s=20

診察をとらないと見逃す病気が存在する、最近の医者は患者に触ろうとしない、と誰かが言っているのを聞くことがある。内科の授業で鑑別診断(この病気はなんでしょう?)をしているときに、先生に「まず何を聞いてどんな身体所見をとりますか?」と問われたものの、早く検査値を見せてくれよと急ぐような気持ちになったのを覚えている。

先生によると、検査をするにも病歴聴取と身体診察で絞ってから適切な検査をオーダーすることが大切だそうだ。知らなかった。初期研修は診察、鑑別診断を丁寧に教えてくれるところに行きたいなとぼやっと感じる。

消化器内科は外科と内科の間のような診療科だといろんな消化器内科の先生から聞いた。手技と内科的診療のバランスが偏りすぎないらしい。ある若い男の先生に消化器内科に決めた理由を尋ねたところ、ザ内科的な頭でっかちすぎる感じでもなく、救急みたいに怒号が飛ぶ感じでもないところがよかったらしい。頭を使うのと手を動かすの両方できるところがよくて、内視鏡カメラを握ったときに向いているかもしれないと思ったのが決め手だったと。

その先生は結局、消化器内科の中でも内科よりの炎症性腸疾患を専門に選んだ。 そういう風に消化器内科に決めた後でも、外科よりのところ(内視鏡)に行く人もいれば、炎症性腸疾患のような内科的よりな消化器内科を選ぶ人もいる。肝胆膵、消化器という軸もあれば、炎症か癌かという軸もある。さらに炎症とがんは別の疾患のように見えても、炎症(胃炎、肝炎、炎症性腸疾患)が癌につながるから癌予防という面白さもあるらしい。

消化器内科は標的臓器が多く、いろんな意味で器の広い科だった。

消化器内科の先生も器が広いというか、いい意味できっちりしすぎていない人が多かった。楽しそうだけど根は真面目な人が多いなと感じ、好感をもてた。一緒に働いたら楽しそうだと思ったなどというと上から目線すぎるかな。

個人的に、消化器内科の先生は大好きだったけれども、もう少し内科的診療が多い方が楽しいかもしれないと感じている。「内視鏡ができるとバイトで稼げる」のは魅力的だが、その分内科の魅力が減ってしまうのが悲しい。

受け持った患者さんが大腸癌の人だったためがん治療についてやたらと調べた。ちなみに患者さんとはコロナのため会えていない。この時期の学生は、基本もなっていないのに受け持ち患者さんの疾患にだけ詳しくなる。がん治療は新しいものがたくさん出てきて面白いなと思った。

大腸癌の治療は5種類くらいあり、それぞれ3次治療までびっしりある。肝臓がん治療の講義で第一選択薬が免疫チェックポイント阻害剤+分子標的薬に置き換えられたと知り、新しい治療がたくさん出てくる病気は治療法があんまり変わらない病気より楽しそうだと思った。

ただ(よく知らないけれど)、がん治療は厳格にガイドラインに従うようだ。ある程度大きい病院で誰が治療してもほとんど同じ治療が選択されるのではないだろうか。どの病院でも現時点でベストの病気が受けられるというのは、がんのような致命的な病気ではとてもいいことだ、と思う。

けれども、もう少し治療の幅があるような病気を面白いと感じる人もいるのかもしれない、そして私はそのタイプかもしれない、とうっすら思った。

あっちかなこっちかなと、自分に向いている向いていないを探しながら、どこの診療科が好きか探っていくのだろうか。消化器内科の先生は好きだけれど、診療内容はもう少し内科よりの方が好きかもしれない、と思っていたときに、大学の部活選びで似たようなことを考えたことを思い出した。

この部活の人は好きだが競技自体はあっちの部活の方が魅力的だとか。部活は間違えても6年我慢すればいいけれど、診療科は30年くらい続くじゃないか。もしずっと働き続けるとしたらそうなるけれど、そんな遠い未来のこと今から考えるなんて無理だ。